ニュースの概要
高血圧の治療を助けるアプリを手がけるCureAppについて、オンライン診療で使う場合の算定点数(=診療報酬の点数)を新しく設ける方向が報じられました。あわせて、これまで厳しいと言われてきた算定の要件を緩める動きも伝えられています。アプリを処方して生活習慣の改善を支える治療は、通院が負担になりやすい働き世代にとって使いやすい形に近づきます。一方で、点数の水準や要件の細部が決まるのはこれからです。医療機関にとっては、導入しても採算が合うかどうかが普及の分かれ目になります。この動きは、デジタル治療が制度の中で定着できるかを占う試金石でもあります。
引用元: 高血圧治療補助アプリ、オンライン算定点数の新設や要件緩和へ/CureApp|CareNet.com(CareNet.com)
分析・見解
通院の壁を下げる、オンライン点数新設の意味
高血圧は患者数が約4,300万人とされる国民病です。それでも、仕事が忙しくて通院が途切れる人は少なくありません。薬だけで血圧が下がっても、塩分や運動の習慣が戻れば数値は元に戻ります。
治療補助アプリは、この生活習慣の部分を毎日支える道具です。ところが従来は、対面での受診を前提にした算定が中心でした。オンラインでも点数が付けば、診察室に来られない時間帯でも治療を続けられます。
要件緩和が効くのは、現場の事務負担
新しい医療技術が広がらない理由は、効果の有無より「手間に見合わない」ことが多いからです。アプリの処方では、患者への説明、設定の支援、経過の確認など、診察以外の作業が発生します。
算定の要件が厳しいと、これらの作業を記録し、条件を満たしているか確かめる負担が重くなります。要件が緩めば、小さなクリニックでも導入しやすくなります。つまり、緩和は普及のスピードに直結する要素です。
先行する海外事例と、日本の保険制度の違い
米国ではデジタル治療の保険適用が進まず、事業者が資金繰りに苦しんだ例が相次ぎました。技術が優れていても、誰がお金を払うのかが決まらなければ事業は続きません。
日本は公的保険の枠内で点数を付ける仕組みがあり、支払い元が明確です。この点は日本の強みです。ただし点数が低すぎれば、企業は開発費を回収できません。高すぎれば、財政面の議論で見直される恐れがあります。ちょうどよい水準を探る作業が、これから本格化します。
見落とされがちな視点は、オンラインの質の担保
オンラインで算定できるようになると、画面越しの診察が形だけになる懸念も出ます。血圧の測定値が本当に患者本人のものか、家庭血圧の記録が正確かといった点です。
ここで鍵になるのが、アプリが集めるデータの信頼性です。記録の自動連携や測定機器とのつながりが整えば、対面よりも細かく経過を追える可能性があります。オンライン化は単なる便利さではなく、データで治療の質を上げる機会でもあります。制度側がどこまで質の基準を示すかが、次の注目点です。
ビジネスへの影響
医療機関は採算の試算を今のうちに始める
点数が決まってから動くと出遅れます。まず、自院の高血圧患者のうち、アプリに向く人がどれくらいいるかを数えておくとよいでしょう。働き世代で通院が途切れがちな層が最有力です。
次に、説明や経過確認にかかる時間を測ります。1人あたりの作業時間と点数を比べれば、導入の損益が見えてきます。オンライン診療の設備や運用ルールも、先に整えておくと立ち上がりが早まります。
企業は点数の外側で価値を示す
点数だけに頼る事業は、制度改定のたびに揺れます。医療機関に選ばれるには、導入支援や問い合わせ対応の手厚さが差になります。
加えて、企業の健康づくり施策や健診後のフォローなど、保険診療以外の出口も用意しておくと安定します。診療での実績データを積み、継続率や血圧の改善幅を示せれば、点数の議論でも説得力が増します。製薬会社との連携や他の疾患への展開も、収益の柱を増やす手段になります。